パテライト系炭酸カルシウムの
安定化と結晶転移について
元壱豊清夫
久
章
高藤辺原原
戸佐池菅杉
化学部無機化学科
古 手 川 産 業㈱
米庄石灰工業㈱
1.はじめに
一般に,炭鞍カルシウムはゴム,プラスチック, 紙,食品,薬品,化粧品等の広い分野に利用されて
いるもので,工業用充填剤として欠くことのできな
い工業材料となっている1)2)。
炭酸カルシウムにはかレサイト,アラゴナイト,
パテライトの3種の同質多像体を取り得ることが知
られている2)。カルサイトは石灰石,アラゴナイトは
サンゴ石灰石等の工業材料に代表されるように,天
然に多く存在している。これに対し,パテライトは
工業材料として見ても表面活性の高い球状粒子を形
成していることから,興味深い素材で将来多分野で
の利用が期待されているものの,全く天然に産して
いない。これは,パテライトが他の結晶形に比べ不
安定であり,水あるいは勲等により容易に他の結晶
形に転移してしまうためでもある。このことからも,
パテライトを合成するにあたっては特殊な合成条件
が必要とされることがわかる。
著者らは,すでにパテライトを有機潜楳と水溶性
の有機酸塩の共存下で水酸化カルシウム水懸濁液
(以下「石灰乳」と言う。)に二酸化炭素含有気体(以 下「炭酸ガス」と言う。)を導入することにより生成 することを発表している3)。しかし,パテライト単味
の利用を考えた場合,パテライト自身の結晶構造が
不安定であるため,パテライトの安定化を行なう必 要がある。
この安定化においては,500CC近くの加熱により球
状形を保ったままカルサイトへ結晶転移させる方
法4)や,パテライトに2価の金属塩を添加してパテ ライトのまま安定させる方法5)が報告されている
が,これら以外の方法として,しゅう酸,リン酸, 縮合リン酸等を添加してパテライトの表面を保護す ることによって転移を防止する方法を見出したので ここに報告する。
また,近年の中性紙の需要増加から,塗工特性に
優れたアラゴナイトが注目を集めているが,著者ら
はパテライト水懸濁液への2価の金属塩の添加と加
熱処理により,水中ではカルサイトにしか結晶転移
しなかったパテライトをほとんどアラゴナイトヘ結
晶転移させる方法も見出したので,この方法につい
ても報告する。
従来のアラゴナイト の製造方法としては①石灰乳
に反応温度,炭酸ガス供給量,炭酸化率を3段階で
制御しながら製造する方法6),②水酸化アンモニウ ムでアルカリ性にした塩化カルシウム水溶液に密閉 式反応容器(オートクレ」ブ)中で炭取ガスを導入 する方法7),③あらかじめアラゴナイトを10%以上 含有させた石灰乳に炭酸ガス供給量を制御して製造 する方法8)等が挙げられる。①の方法では反応温度,
炭鞍ガス供給量,炭酸化率を3段階で変化させるた
めに条件設定が難しくなりカルサイトが生成する危
険性が大きい。②の方法では特殊製造装置であるオ
ートクレーブを使用せねばならないし,①②③の方
法とも純粋なアラゴナイトの製造はできず,最適条
件Fでも10%以Lのカルサイトの混入が避けられな い等の欠点がある。
以上の方法に対し,本方法は一度パテライトを合
成してアラゴナイトを集成するという2段階の操作
を要するものの,製造条件が煩雑でなく,得られる 炭酸カルシウムのほとんどがアラゴナイトと言う利
昭和61年度 研究報告 大分県工業試験場
過した時点とした。反応終了後,ろ過し,4∼5回
水洗した後メタノールで2垣i 洗浄し,約1000Cで10時
間以上乾燥させ生成物32gを得た。得られた炭酸カ
ルシウムはⅩ繰回折の結果からすべてパテライトで あった。Ⅹ繰回折図を図−1に,走査型電子顕微鏡写
真を写真一1に示した。写真1からわかるように,
このパテライトは1ノJ m
前後の粒子のそろった球状
形であった。また,BE′ 1、法による比表面積は約40 m2/gという値であった。
パテライトB:井卜ら9)や宮田ら10)の方法に準
じ,約60CCに調整した20%の炭酸ナトリウム水溶液
500gを2/のビーカーに入れ,攫絆しながら,やは
り約600Cに調整した15%の塩化カルシウム水溶液
700gを1分間におよそ150gの割合で滴下していっ
た。滴下終了後,素遠くろ過し,4∼5回水洗した
後メタノールで2回洗浄して約1000Cで10時間以上
乾燥させ,93gの生成物を得た。この生成物はⅩ繰
回折の結果からすべてパテライトで,BET法による
比表面積は約0.3m2′ /′ gという値であった。 点がある。
2。実相法
2.1試料
本研究で使用した水酸化カルシウム,リン駁,縮
合リン酸等のパテライトの安定化剤,各種金属塩等
の試薬はすべて和光純薬工業㈱製の特級あるいは一 級品を用いた。
2。2 バナライトの合成
本研究で用いたパテライトは次の2つのパテライ
トである。
パテライトA:前報の「パテライト型炭酸カルシ
ウムの合成方法」3)に準じて合成した。すなわち,水
酸化カルシウム25gと酢酸カルシウム59gの入った
1J のコニカルビーカーに水250g,メタノー〟ル166
gを添加し10分間攫拝するとともに,石灰乳の温度
を約25eCに調整した。撹絆しながらこれに100%の炭
酸ガスを2L/m
hで供給していった。炭酸化の反応
終点は石灰乳の温度上昇が終り下降し始めて3分経
パテライトA
パテライトB
写真−1パテライトの走査型電子顕微鏡写真
2.3 パテライトの安定化実験
実験1:2.2で合成したパテライトAl gに各
濃度に調整した無機化合物,有機化合物の各種添加
剤をパテライトに対し1,3,5,10重量%を加え,
水で全量を30gとし,25DCで24時間授拝させた後,ろ
過し,4(一5回水洗した後メタノールで2回洗浄し
て約汀肝Cで10時間以上乾燥させた。乾燥物について
Ⅹ線回折で結晶構造の決定,および走査型電子顕微
鏡で形状の観察を行った。
実験2:さらに,パテライトA5gに上記実験で
10 20 う0 40 50 60
2β /deg。
図−1 パテライトのX繰回折図
パテライトの安定に効果のあった安定化剤を10重量
%を加え,水で全量を200gとし,25U
Cで10分間攫拝
させ,ろ過し,4∼5回水洗した後メタノールで2
回洗浄をして約1000Cで10時間以上乾燥させた。乾燥
物のうち0.7gを250Cの水30g中に168時間横枠させ
た後,ろ過し,4∼5回水洗した後メタノ」ルに2
回洗浄をして約10()CCで10時間以上乾燥させた。幸三燥
物についてⅩ繰回折で結晶構造の決定,および走査
型電子顕微鏡で形状の観察を行った。
2.4 パテライトの結晶転移実験
300m
l のコニカルビーカーにバナライトA,Bと
各種金属塩を入れ,水を加えて全量を200gとし90CC
で3∼24時間撹絆させたまま保持した。加熱処理後,
ろ過し,4∼5回水洗,2回のメタノール洗浄をし
て約1000Cで10時間以上乾燥させた。乾燥物について
X繰回折で結晶構造の決定,および走査型電子顕微
鏡で形状の観察を行った。
3.結果と考察
3.1 パテライトの安定化について
無機化合物,有機化合物の各種添加剤がパテライ
トの安定化に与える影響を調べたところ,表1に示 すような結果を得た。
添加剤無添加の場合,パテライトが水中では不安
表−1各種添加剤のパテライトの安定化の効果
添
添加剤重%
シウムの結晶形 シウムの給晶形
無 カルサイト
HCl 1,3,5,10 カルサイト
CH3COOH 1,3,5,10 カルサイト
I i3PO4 1,3,5,10 パテライト パテライト
カルサイト
t I 2SO4
3,5,10 パテライト カルサイト
カルサイト
‖
(CO
O
H
)2 口
パテライト パテライトI i 4P207 円 1,3,5,10 パテライト
パテライトj (NaPO3)6 H 1,3,5,10ヨ パテライト 川
パテライトHF
1,3,5,10F
パテライトパテライト
* パテライトに対する重量%
カルシウム塩を生成する化合物の添加では,パテラ
イトの表面を保護することができず,パテライトは
カルサイトに結晶転移することがわかった。これに
対し,リン酸等の安定化剤ではパテライトの表面に
不溶性のカルシウム塩を形成し,この不溶性の塩が
パテライト表面から脱離することなく,パテライト
を外部から水分の浸入を防止しパテライトの安定化
に寄与していると思われる。また,硫酸の場合にお
いては生成する硫酸カルシウムの溶解度は250Cで0, 21g。/′ 100g−H202)であるのに対し,他の不溶性カルシ ウム塩はしゅう酸カルシウムの溶解度0.0007gノ/′ 100 g−H202〉(25‖ C)で代表されるように,すべて0・1g//
− 89
定なことから,最も安定な結晶形のカルサイトに結
晶転移した。同様に塩酸,酢酸の場合においてもカ
ルサイトへ結晶転移することがわかった。一力1リ
ン酸などのリン酸化合物,しゅう酸,フッ鞍ではカ ルサイトへの結晶転移は起きずパテライトのままで あり,またこのパテライトをろ過,乾燥して,再度 水中で168時間攫拝し続けたところ,やはりパテライ
トのまま安定で結晶転移は見られなかった。しかし,
硫酸添加の場合,実験1においてはパテライトのま
ま安定であったが,実験2においてはカルサイトヘ
の結晶転移が見られた。
昭和61年度 研究報告 大分県工業試験場
100g一日20以’ Fで9 硫酸かレシウムは不溶性カルシ ウム塩の中でもかなり大きな溶解度を示してし1る。
従って,この溶解度の遠いから実験2において,硫
酸添加によるパテライトからかレサイトへの結晶転 移が起きたと考えられる。
Ⅹ繰回折ではパテライト表面のイく溶性かレシウム 塩の存在が明確に認められなかったが,リン酸を添 加した場合は走査電子顕微鏡で観察することができ
たので9リン鞍処理によるパテライト写曳 および
比較のためにヘキサメタリン酸ソ」ダ9酢酸,添加
剤無添加での実験1後のパテライトあるいはかレサ
イトの写真を写真2に示した。写昇2から見られ るようにリン鞍で処理した場合,パテライト表面に 鱗片状の水酸アパタイトらしき結晶が生成しパテラ
イト表面を保護しているのがわかる。ヘキサメタリ
ン酸ソ一夕や添加の場合タリン酸処理の場合と同様に,
パテライトは安定化されていたが,パテライト表面
の形状変化は観察されなかった。またぅ酢酸および 添加剤無添加の場合,パテライト表面の保護がない ためバナライトがi 〃‡ 11前後の立方体状のかレサイ
トに結晶転移していることがわかる。
ところで予安定化剰の添加量は各安定化割により 異なるが9 バナライトAに対しては1重量%以上で
あればよい。しかし9添加量が多くなると安定化剤
と反応するパテライト量が増大するためあまり好ま しくない。またぅ/、ごテライト Åの比表面積は約40 m2′ ′ ′ ′ gであるが9 バナライトBでは約0.3n12ノ/gであ
ることからバナライトBの安定化においては,パテ
ライトAに比べ安定化剤の添加量は微量でも効果が
あると予想される。
写真−2 各種添加剤による24時間のカルサイト、パテライ巨の走査型電子顕微鏡写真
ところぅ表一2に示すような結果を得た〇また,亜鉛,
カドミウム9網の3程の塩化物の加熱処理で得られ
た炭酸かレシウムの走査型電子顕微鏡写真を写真¶
3に示し詫㌻2にはパテライトから結晶転移したカ
ルサイト,アルゴナイトのⅩ線匝ほ斤図を示した。
3.2 パテライトの結晶転移について 3.2。1 金属種の効果
パテライトAの1濃度をn.35%として各棒金属の塩 化物をパテライトに対し10モル%,加熱温暖900C, 加熱処理時間を3時間として結晶転移実験を行った
* Shann()nのイオン半径を示した。
** 1ニ低スピン状態
***h:高スピン状態
実験条件
写真−3 亜鉛、カドミウムおよび飼との加熱処理で得られた炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真
昭和61年度 研究報告 大分県工業試験場
卜をアラゴナイトへ結晶転移させるという結晶選択
性が見られた。
この亜鋭マグネシウム等の結晶選択性は同じく
表−2に記載の金属種のイオン半径11)に起因してい
ると考えられる。すなわち,かレシウムよりイオン
半径の小さい亜鉛,しマグネシウム等の金属種は炭酸
塩を形成するとカルサイトと同形の結晶形になる
が,これら金属種の存在卜において生成する炭酸カ
ルシウムはアラゴナイトである。逆に,カルシウム
よりイオン半径の大きい鉛,カドミウム等の金属種
の炭酸塩はアラゴナイトと同形の結晶形であるが,
生成する炭幣かレシウムはかレサイトである。この
ことは北野の炭鞍水素かレシウムからの炭酸カルシ
ウムの生成研究の結果12)T13)とよく一致している。
しかしながら,同じくカルシウムよりイオン半径
の小さい鋼,マンガンでは,パテライトはアラゴナ イトではなくカルサイトに転移していることから, 必ずしもイオン半径で結論付けることはできない。
そこで,亜銑鋼の塩化物をパテライトに対し100モ
○
10 20 う0
2β /deg.
40 う0 60
図−2 パテライトから結晶転移したカルサイ
ト。アラゴナイトのX繰回折図 □ ○ △ △
明らかにアラゴナイトヘ結晶転移したものは亜
鉛,マグネシウム,ニッケル,コバルトの4種の2
価の金属塩で,逆にカルサイトヘ結晶転移したもの
は鉛,カドミウム,鋼,マンガン等の2価の金属塩,
ナトリウム,リチウムの1価の金属塩ならびに3価
のアルミニウム塩であった。2価の金属は上記の1
価,3価の金属とは異なりパテライトのかレシウム
ヒのイオン交換反応により表一2に記載の炭酸塩,塩 基性炭酸塩を形成しやすいことがその特徴として挙 げられる。本実験では,約900Cの加熱処理後の金属
塩生成物についてⅩ繰回折で調べたため,ニッケル
では水酸化物,鋼では酸化物を形成した。この2価
の金属塩とかレシウムとのイオン交換反応は,250C の水中においてパテライトの安定化に寄与すること
となり,パテライトのままで結晶転移は生じない。
しかし,熱エネルギーを与えることにより結晶転移
が引き起こされることになり,パテライトはカルサ
イト,アラゴナイトのいづれかの結晶形に結晶転移
することになる。中でも亜鉛,、マグネシウム,コバ ルトぅ ニッケルの4種の金属塩の添加は,パテライ
92 肝
CuC12
10 20 う0 40 50 60
2β /d eg.
図−3 パテライトと亜銘、銅の加熱処理後の
生成物のX繰回折図
Cu2(OH)3C】 ⑳:Zn4CO3(OH〉8。H20
CuO 息:Z憫
ル%添加し熱処理した場合の生成物をⅩ繰回折で調
べてみた。結果を図¶ 3に示した。これより亜鉛では
塩基性の炭酸亜鉛が生成するのに対し,嗣では塩基
性塩化銅,酸化銅が生成することが確認され,それ
ぞれの生成物に大きな差異が見られた。このことか
ら,カルシウムよりイオン半径の小さい金属でも,
高温域で酸化物を形成しやすいものは,パテライト
のアラゴナイトへの結晶転移に寄与しにくいのでは ないかと思われる。
ところで,金属種を亜鉛に限定し,塩化物の他に
種々の亜鉛化合物について同様な条件で結晶転移を
事
試みた0結果を表3に示した。表3から明らかな
ように,いづれの塩においてもアラゴナイトへ転移
し,しかもその濃度は塩の種類に無関係に0.1モル%
以上という値であった。従って,パテライトのアラ
ゴナイトヘの結晶転移は,金属塩の塩種類ではなく
金属種そのものの濃度で決定されると考えられる。
また,不溶性の酸化亜鉛,塩基性炭酸亜鉛の添加に
おいてもパテライトはアラゴナイトに結晶転移して
おり,一概に水溶性の金属塩がよいとは言い難いが,
パテライト水懸濁液のpHが9付近であることと亜
鉛が両性物質であることから,不溶性の亜鉛塩にお
いて若干の溶解度の増加があるのではないかと考え
られる。
表−3 亜鉛化合物によるパテライトの結晶転
移への効果
3、2.2 パテライトの比表面積による効果
3.2.1では主にパテライトAについての実験結
果に基くものであったが,製法の異なる比表而積の
小さいパテライトBでも同様な条件下で,塩化亜鉛
の濃度を変えてパテライトBの結晶転移実験を行っ
た。結果を表・4に示した。
表−4 塩化亜鉛によるパテライトBの結晶転
移への効果
実験条件
パテライトAの濃度=0.35%
加熱処理温度:90〇C 加熱処理時間ニ7時間
パテライトAでは0.1モル%以上でアラゴナイト
へ転移していたものがパテライトBでは0,0001モル
%以上でアラゴナイトヘ転移している。当然ながら,
パテライトBの比表面積がパテライトAのそれに比
べ極めて小さいことに起因していると考えられる。
また,加熱処理時間もパテライトAでは2時間以内
でアラゴナイトヘ転移するのに対し,パテライト詣
では7時間と長時間を要した。
以上のことから,パテライトがアラゴナイトへ転 移するための金属塩濃度はパテライトの比表面横に
依存し,比表面積が小さい程金属塩濃度は低くなる
が,その転移速度は遅くなることが判明した。
3.2.3 パテライト濃度による効果
パテライトA,Bのそれぞれの濃度を変えて,塩
化マグネシウムを10モ′ レ%とし900Cで7時間加熱処 理した生成アラゴナイトの走査型電子顕微鏡写真を 写真一4に示した。
写真m
4から明白なように,パテライトA9日とも
その濃度に関係なくアラゴナイトへ転移したが,生
成アラゴナイトの形状ならびに粒子形は,パテライ
ト濃度,パテライト程より変化することが判明した。
ッル 93 ¶
実験条件
パテライトAの濃度=0∴弓5%
加熱処理温度:900C
昭和61年度 研究報告 大分県工業試験場
写真−4 パテライト濃度によるアラゴナイト走査型電子顕微鏡写真
a∼e:パテライトB f ∼j :パテライトA
実験条件 MgC12:パテライトに対して10モル% 加熱処理温度錮OC 加熱処理時間7時間
すなわち,パテライトAではパテライト濃度が10%
以下で10×0.5/J mの針状結晶であったが,25%の高 濃度域では(15∼20)×1/J mの針状結晶であった。ま た,パテライトBではパテライト濃度1%以下で
(10∼20)× (0.5∼1)〃mの不揃いの針状結晶,5,
10%で10× (1∼2)〟mの柱状結晶,25%で10× 3
〟nl の柱状結晶が生成し,パテライ トA,Bともに高 濃度において形状の一定化ならびに粗大化が見られ
た。しかし,パテライトAにおいてパテライト濃度
に無関係に針状結晶が生成したのに対して,パテラ
イトBではその濃度により形状が異なっており,バ テライトAと違った挙動を示した。これはパテライ
トの比表面碩に伴う結晶転移の反応速度に起因する
ものと考えられる。
3.2.4 加熱処理温度による効果
パテライトAの濃度を0.35%,塩化マグネシウム を1nモル%とし,加熱処理して得たアラゴナイトの 走査型電子顕微鏡写真を写真∧5に示した。
写真¶ 5からわかるように,加熱処理温度が紆Cに おいても24時間以内でアラゴナイトが生成し,比較 的低い温度でも充分結晶転移が生じることが判明し た。しかしながら,70DC以上の加熱処理温度で生成
したアラゴナイトが10×
0.5甘m
と一定の形状であ
ったのが,400Cにおいてはアラゴナイトの結晶は
10× (0.2∼1.5)〟mと不均一一であった。
写真−5 加熱温度によるアラゴナイトの走査型電子顕微鏡写真
実験条件 パテライト濃凰).35ヲ占
M
gC12 パテライトに対して用モル%
加熱処理時間 40nC… 24‡
i r l O
O
℃… 3主j r
70CC… 2甜‡ r 16()℃… 3三三i 一
1)パテライトの安定化においては,パテライ ト表
面で不潔性ぴ)かレシウム塩を形成するリン乳 編
しゅう鍛,フ
針ノン巨熟 ッ酸化台物等しノ)安定化削 が有効である。,
95 ‰劇Ⅳ
4.まとめ
昭和61年度 研究報告 大分県工業試験場
2)金属塩の添加によるパテライトからアラゴナイ トヘの結晶転移においては,金属塩の陰イオンで はなく金属種そのものに依存し,カルシウムより イオン半径が小さい亜鉛,マグネシウム,コバル
ト,ニッケルの2価の金属塩の添加がアラゴナイ
トへの結晶転移に効果的である。しかし,同じく
カルシウムよりイオン半径が小さい銅,マンガン の添加は,カルシウムよりイオン半径が大きい鉛, カドミウム等の添加と同様に,パテライトはアラ ゴナイトではなくカルサイトに結晶転移する
3)パテライトに2価の金属塩を添加してアラゴナ
イトに結晶転移させる場合,400C以上の加熱処理 が必要である。400C以下の水中では24時間処理し ても結晶転移は起きず,逆に2価の金属塩がパテ ライトの安定化に寄与する。
4)パテライトからアラゴナイトへの結晶転移にお いて,パテライトに対する金属塩の濃度は,パテ ライトの比表面積に左右され,比表面積が小さい 程低くなる。
5)パテライトの濃度を変えてアラゴナイトへ結晶 転移させると,比表面積の小さなパテライトでi ま, 低濃度で針状,高濃度では柱状となる。逆に,比 表面積の大きなパテライトではパテライト濃度に
関係なく針状結晶が生成する。また,パテライト
の比表面積とは関係なく高濃度になる程,生成す
るアラゴナイトの形状,大きさが整う。
6)加熱温度を変えて,パテライトをアラゴナイト へ結晶転移させると700C以上で比較的均一な粒子 が生成するが,400Cと低温になるとアラゴナイト 粒子の不均一化が起こる。
ところで,パテライトのアラゴナイトヘの結晶転
移の方法として,パテライト水懸濁液への2価の金
属塩の添加と加熱処琴を行ってきたが,この2価の
金属塩をパテライトの合成の段階で添加してできた パテライトをろ過,乾燥し,パテライト水懸濁液と
して加熱処理したり,同じくパテライトの合成段階
に2価の金属塩を添加した反応乳液をそのまま加熱 処理することが追加実験により判明した。
この実験に使用した走査電子顕微鏡は日本自転車 振興会から競輪収益の一部である機械工業振興会の 補助を受けて設置したものである。
5.参考文献
1)日本ゴム協会ゴム工業技術員会編,「フィラーハ ンドブック」,大成社(1985)
2)石膏石灰学会編,(【石膏石灰ハンドブック」,技
報堂(1972)
3)大分県工業試験場,昭和60年度業務年報
4)特開昭57−92521
5)特閑暇5792520
6)特開昭54−50499 7)特公昭43−22783
8)特開昭59一川232916
9)井上嘉亀他,表面,7,665(1969)
10)宮田謙一他,日化,732(1976)
11)日本化学会編,「化学便覧」,丸善(1984)
12)北野 康,現代化学,N
o.6,12(1974)
13)北野 康,化学と工業,Vo121,N
o8,
1017(ユ968)